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需要予測とは?代表的な需要予測手法と精度向上の実務ポイントを体系的に解説
需要予測とは、過去の販売実績や市場動向をもとに将来の需要量を見積もる取り組みです。調達・生産・在庫・配送の計画に直結するため、精度の高い予測は在庫リスクや機会損失の抑制につながります。本記事のポイントは次のとおりです。
- 需要予測手法は、定量的手法・定性的手法・AI/機械学習の3系統に整理できます
- 精度はMAPE・MAE・RMSEなどの指標で評価し、バイアスの方向も確認します
- 精度向上にはデータ品質、外部要因の取り込み、予測と実績の見直しが重要です
- 導入は小さな範囲から始め、概念実証(PoC)を経て段階展開する進め方が現実的です
●目次
将来の需要を見積もる需要予測
- 需要予測の定義と役割
需要予測は、事業活動の起点となる将来の需要量を見積もる作業です。
自社製品の売上などから、将来の需要をさまざまな観点で予測することを指します。手法は数多く存在しますが、必ず予測どおりになるわけではありません。それでも需要予測を行わなければ、売上の機会損失や在庫リスクが高まります(参照*1)。主な目的は、将来の販売動向をあらかじめ把握し、それに基づいた調達・生産・在庫・配送などのリソースを最適に配分することにあります(参照*2)。
つまり需要予測は、単なる数字の当てものではなく、経営資源の配分判断を支える基礎情報です。需要予測がどの業務判断に接続しているかを整理しておくと、役割を捉えやすくなります。
- 在庫・生産計画における位置づけ
需要予測は、在庫と生産の計画を組み立てる土台に位置づけられます。
過去の販売実績や市場動向、季節要因、キャンペーン計画などをもとに将来の需要量を予測する取り組みは、物流分野において輸送計画・倉庫稼働・在庫配置の調整に活用されます。これにより、余分なコストや作業負荷を抑えることが可能です(参照*3)。海外の解説でも、需要計画は過去データ・市場トレンド・季節性に基づく顧客需要の予測を含み、精度の高い需要計画が生産や在庫に関する意思決定を助けます(参照*4)。
需要予測の値は、発注量・生産ロット・拠点間輸送・人員配置など複数の計画に同時に波及します。そのため、予測の粒度と更新頻度を業務の意思決定サイクルに合わせて設計することが実務でのポイントです。
- 取り組むメリット
代表的な需要予測手法の全体像
- 定量的手法(時系列・回帰)
定量的手法は、過去の実績値を計算式に当てはめて将来値を求めるアプローチです。
需要予測は、過去の実績をもとにした定量的予測と、人の意見などをもとにした定性的予測に分けられます。定量的予測の代表例として、移動平均法は過去の一定期間を移動させながら平均を算出し、その平均値をもとに需要予測を行う手法です。指数平滑法は、過去データの実績値および予測値をもとに、予測対象の値を算出する手法です(参照*1)。移動平均法は「予測値 = 直近n期間の売上合計 ÷ n」、指数平滑法は「予測値 = α × 前月の売上 + (1-α) × 前月の予測値」、加重移動平均法は「予測値 = Σ (売上 × 重み) ÷ Σ (重み)」で表されます(参照*2)。
時系列型の手法は、需要のトレンドや季節性が比較的安定している商品で扱いやすい特徴があります。実務では、まず単純な移動平均で全体像を掴み、そのうえで平滑化係数や重みを調整する順序が理解しやすい進め方です。
- 定性的手法(デルファイ法・市場調査)
- AI・機械学習による予測
AI・機械学習を用いた予測は、多変量データから需要パターンを自動的に学習する手法です。
AI・機械学習予測は、大量の多変量データからパターンを自動学習し、非線形な需要変動にも対応できる手法として近年、製造業での導入が加速しています。製造業に関する解説では、製造工程でのAI導入率は全体で12.2%、受発注・在庫管理のデジタル化率は35.2%にとどまります(参照*6)。また、海外の基盤モデルの例では、単変量、多変量、共変量付き予測など任意の予測タスクをゼロショットで処理する設計が示されており、多変量予測では互いに連動する複数の時系列を同時に予測して変数間の依存関係を捉え、予測精度を高めるとされています。小売業ではプロモーションキャンペーンや祝日スケジュールを考慮しながら需要を予測し、在庫水準を最適化できます(参照*7)。
AI活用は万能ではなく、扱うデータ量やモデル運用体制と釣り合いを取る必要があります。まずは既存の時系列モデルとAIモデルの結果を比較し、精度と業務適合性の両面から採否を判断する進め方が現実的です。
精度を測る評価指標
- MAPE・MAE・RMSEの違い
精度評価では、誤差の測り方が異なる複数の指標を使い分けます。
MAPEは、実際の値(実際の出荷量)と統計予測との差をパーセントで表した計測値で、値が高いほど差が大きく、予測エラーの程度が大きいことを示します(参照*8)。MAEは予測値と実測値の絶対差の平均で、RMSEは誤差を二乗してから平均し、その平方根を取ります。二乗する処理により、大きな誤差ほど大きく評価される特徴があります(参照*9)。
MAPEは商品間や拠点間の比較がしやすい一方、実測値が小さいときに数値が跳ねやすい特徴があります。RMSEは大きく外した予測を強く評価したい場面に向くなど、目的に合わせて指標を選ぶことが実務でのポイントです。
- 予測バイアスの見方
精度向上の実務ポイント
- データ品質と量の確保
精度向上は、まず土台となるデータの質と量を整えることから始まります。
データの質の向上と量の増加を同時に行うことが基本ポイントとされ、BIツールやERPシステムなどのさまざまなITシステムを活用し、質の高いデータをより多く蓄積することが重要です(参照*1)。解説では、商品グループ単位で需要を集計すると変動が小さくなり、信頼性が高まるとされています。また、予測期間が長くなるほど精度は低下するため、変化する条件を反映するために継続的な評価と更新が欠かせません(参照*5)。
データ整備は地味な工程ですが、精度向上の効き幅が大きい領域です。まず自社データの粒度・欠損・重複を棚卸しし、そこから改善計画を組むと着手しやすくなります。
- 外部要因(天候・イベント)の取り込み
外部要因の取り込みは、内部データだけでは掴めない変動に対応するために有効です。
社内の販売・在庫データだけで予測モデルを構築すると、外部環境の急変に対応しきれません。天候データ、経済指標(消費者物価指数・鉱工業生産指数等)、イベントカレンダー、さらにはSNS上のトレンド情報など、需要に影響を与える外部データを段階的に取り込むことで予測の安定性が増します。最初から大量の外部データを投入する必要はありません(参照*6)。従来の予測モデルに加えて、天候、祝日・大型イベントの実施、経済指標やSNSトレンドといった外部データを連携すると、より実状に近い予測が可能になります。例えば天候悪化予測を物流量の抑制・車両手配に事前反映すれば、遅延リスク・余剰コストを抑制できます(参照*3)。
外部データは何でも取り込めばよいわけではなく、需要への影響が説明できる変数を選ぶことが精度向上の近道になります。まず影響の大きい要因から段階的に組み込み、効果を測りながら広げる進め方が現実的です。
- 予測と実績のPDCA運用
手法・システム選定の判断基準
- 選び方の3つの視点
手法とシステムの選定では、機能・対象範囲・運用のしやすさを軸に検討します。
需要予測システムは搭載されている機能や業界・業種という観点から、大きく5つのタイプに分けられます。汎用的な需要予測に対応、小売店舗向けの需要予測に強み、自動発注に対応、在庫適正化に強み、手軽に使えるという分類です。比較ポイントとしては、分析用データの提供の有無、分析対象の範囲の広さ、自社での運用のしやすさの3点が挙げられています(参照*10)。
自社の課題が在庫適正化なのか、発注業務の自動化なのかによって、選ぶべきシステムのタイプは変わります。機能一覧の比較だけでなく、既存のITシステムや業務フローと接続しやすいかを合わせて確認することが、実務での落とし穴を避けるポイントです。
- スモールスタートの進め方
導入は全社一斉ではなく、範囲を絞って始めるのが現実的です。
導入企業の声として、「スモールスタートで始めたことは正解だった」「導入のハードルが低いソリューションであったことが大きな後押しになった」と述べられています(参照*11)。概念実証(PoC)の実施では、いきなり全品目・全拠点に展開するのではなく、限定した品目カテゴリ・期間でPoCを行い、予測精度と業務適合性を検証します。予測値と実績値の乖離(MAPE等の指標)を測定し、実運用に耐えうる水準かを判断するのがこの段階の目的です(参照*6)。
PoCの評価基準を事前に決めておくことで、拡大展開の判断がぶれにくくなります。対象品目・期間・評価指標・撤退条件を最初にセットで設計しておくと、投資判断がしやすくなります。
精度向上を実現した企業事例
国内では、AIと人の判断を組み合わせて成果を出した事例が公表されています。
サッポロビール株式会社が利用していた需給計画システムは、過去実績から統計学的に予測を行っていました。この課題を改善するため、需要予測AIの導入に加えて、AIが算出した予測値をもとに需給調整担当者が判断するという人とAIの協働モデルを導入し、予測精度の20%アップを実現しました。森永製菓株式会社は、日本気象協会から提供されるデータをもとにした需要予測を行い、約10%の作業効率向上に成功しました(参照*1)。アスクル株式会社は、2023年11月に物流センターと補充倉庫間の拠点間で商品輸送を行う横持ち計画にAIを活用した需要予測モデルを導入しました。本モデルの導入により、ALP横浜センターにおいて商品横持ち指示の作成工数約75%減/日、入出荷作業約30%減/日、フォークリフト作業約15%減/日の実績を得て、全国の物流拠点に展開を拡大しています(参照*3)。
事例に共通するのは、AIだけに任せず運用設計まで含めて改善している点です。サントリーホールディングスでは、約450品目のスピリッツ商品を対象にAIを活用した需要予測を導入し、従来は担当者が個別に行っていた予測業務を自動化して、供給計画の策定スピードを大幅に引き上げました。その結果、年間6,000時間の業務削減を達成し、これは需要予測・供給計画業務の約2割に相当する工数です。日本触媒では、AIソリューションPlaniumを導入し、年間50%以上の計画工数削減が見込まれています(参照*6)。製粉業の検証段階の報告では、検証対象製品の約6〜7割で人間の予測よりも良い結果を示し、一定の優位性が確認されています(参照*11)。
おわりに
需要予測は、調達から配送までの意思決定を支える基礎情報であり、代表的な需要予測手法として時系列型の定量的手法、デルファイ法などの定性的手法、AI・機械学習が使い分けられています。精度はMAPE・MAE・RMSEといった指標とバイアスの方向から評価でき、どの症状を減らしたいかによって重視する指標が変わります。
精度向上には、データ品質と量の確保、外部要因の取り込み、予測と実績の見直しが三本柱となります。導入は小さな範囲から始め、概念実証(PoC)と組み合わせて評価基準を先に決めておくことで、拡大展開の判断が進めやすくなります。
参照
● (*1) ERPの基礎知識 | マネーフォワード クラウドERP - 需要予測とは?概要や具体的な手法、成功事例などを解説
● (*2) キャムマックス - 需要予測と在庫管理の基本|計算式からExcel活用、実践ノウハウまで徹底解説
● (*4) Supply Chain Planning: What Is It and How Does It Work?
● (*5) Introduction to Operational Excellence - Introduction to Operational Excellence
● (*6) GENIEE's library - 営業組織課題を解決するメディア - 製造業の需要予測はなぜ外れる?AIを活用し成功に導く方法と4つの課題を紹介
● (*7) Amazon Web Services - Chronos-2 の紹介:単変量予測の先へ - 多変量も共変量もゼロショットで
● (*8) Demand Managementの使用 - 予測精度の計測方法
● (*9) Model Evaluation and Validation
● (*10) アスピック|SaaS比較サイト - 需要予測システム比較17選。AIでできることや選び方を紹介
● (*11) ニップンのDX新戦略「現場発DX人材が牽引する、AI需要予測スモールスタート」の全貌|AI予測分析ツール「Prediction One」導入事例 - ニップンのDX新戦略「現場発DX人材が牽引する、AI需要予測スモールスタート」の全貌|AI予測分析ツール「Prediction One」導入事例
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